[ Diagram ] 2001年12月 1日 宮ヶ瀬線ダイヤ改正について

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04.近年のダイヤ改正について

 ここからは,近年の主なダイヤ改正について,概要,背景,及び以前との比較を中心に記述する。

04-1.2001年12月 1日 宮ヶ瀬線ダイヤ改正

1.ダイヤ改正の概要

 宮ヶ瀬線のダイヤは,1992年の柚木支線全通に伴う白紙改正以来,小規模なダイヤ修正を除くと特に変更がなかったが,方南町〜若葉町間の複々線化,若葉町〜神保原間の3線化(下り1線,上り2線)の完成,輸送体系の見直しによるダイヤ改正を2001年に実施した。
 2008年の宮ヶ瀬ライナー新設に伴うダイヤ改正など,一部で若干の修正があるものの,今回の2001年のダイヤ改正が基本的に現在のダイヤとなっている。

 朝ラッシュ時は神保原〜方南町間の線増により,同区間で1時間あたり10本を増発,従来の急行20本,各停10本から,急行20本,準急10本,各停10本(神保原始発)に変更した。これにより,混雑率は212%から164%に低下,平行ダイヤの解消により,所要時間も急行は8分短縮(神保原〜新宿間,26分→18分),各停は4分短縮(同,33分→29分)された。

 昼間時〜夕ラッシュ時は,運転体系を大きく変更,従来の緩急比1:1の万能型のダイヤから,緩急比2:1の中〜遠距離輸送をより重視したダイヤ編成とした。
 また,中〜遠距離高速輸送を重視した高速急行を新設,新宿〜神保原以西の高速急行停車駅間の所要時間を4分短縮した(新宿〜田名間,40分→36分)。
 一方,急行は停車駅を3駅追加すると共に,半数が終日都営新宿線に直通運転を開始,さらに高坂で高速急行と急行を接続させることで,高速輸送ネットワークの充実を図った。

2.検討の経緯

 従来のダイヤ編成は,増え続ける輸送量にいかに対応していくかがポイントであった。しかし,1990年代前半から沿線開発の停滞,景気低迷等により,輸送量の伸び幅の減少が見られるようになった。さらに今後はモータリゼーションの進展や少子高齢化の影響による輸送量減少の懸念があった。

 宮ヶ瀬線の場合,1970年代の新線建設,新宿駅等の大規模改良工事,及び1990年代〜2000年代の複々線化・3線化工事による償還の負担が大きく,輸送量の減少による収入の減少は経営を直撃する。

 折りから方南町〜神保原間の複々線化・3線化工事が完成したことによる線路容量の増大からダイヤ編成上の余裕度が高まったこともあり,ダイヤのあり方を従来の需要に対応した受身のダイヤから,需要を誘発できる競争力を持ったダイヤへ転換することとし,速達性の向上(所要時間短縮),混雑の緩和(増発・増結),ネットワークの強化(直通運転の実施,乗換時間の適正化等)などを実施することにより,ダイヤの競争力の向上を図ることとした。

図表7.輸送の推移

3.複々線化・3線化

 輸送量増加に対応するため,新宿〜高坂間の輸送力増強工事が計画され,1977年に新宿〜方南町間の複々線化が完成,2001年に方南町〜若葉町間の複々線化,若葉町〜神保原間の3線化(下り1線,上り2線)が完成した。

 これにより線路容量が劇的に増加したことから,今回のダイヤ改正で特に朝ラッシュ時を中心とした輸送力増強,平行ダイヤの解消,スピードアップの実施が可能となった。

 なお,神保原〜天上間は引き続き3線化工事中であり,天上〜高坂間はトンネル・橋梁等の大規模構造物の改築・新築が必要であることから,事実上凍結されている。

図表8.ダイヤ改正前後の配線図(新宿〜神保原間)

4.種別体系の見直し

 従来は急行系統(急行,区間急行,準急)と各停の事実上の2種別であり,近距離(新宿〜神保原間)は緩急分離,中〜遠距離(神保原以西)は緩急接続を行うことで,様々な需要に対応してきた。
 しかし,神保原以西の各駅の乗降人員が増加し,新宿とこれらの各駅とを結ぶ利用者が相対的に増加する一方,急行の停車駅が増加する傾向にあり,所要時間の増大が見られるようになってきた。
 そこで,最も輸送量の多い新宿〜神保原以西の速達需要に対応するため,新宿〜神保原間ノンストップの高速急行を新設することとした。一方,急行は多摩丘陵地区で乗降客数の多い天上,今井谷戸,南柚木の3駅を追加し,利便性の向上を図った。

図表9.ダイヤ改正前後の種別体系
 


 ※弥生,南台は新線の列車のみ停車

 

5.各時間帯の主な変更点

 ここでは各時間帯の主な変更点を記す。なお,ダイヤの詳細は別項「宮ヶ瀬線のダイヤ」を参照されたい。

(1)朝ラッシュ時

 方南町〜神保原間の複々線化・3線化の完成による混雑の緩和及び平行ダイヤの解消によるスピードアップを実施した。

 従来は12分サイクルで,1時間あたり急行20本,各停10本の合計30本,混雑率は212%であった。また種別間の混雑を平準化するため,高坂〜新宿間で平行ダイヤを実施しており,そのため,同区間の所要時間は急行で42分,各停で52分であり,特に急行は昼間時の28分に比べ所要時間が著しく増加しており,標準時の各停と同じ所要時間であった。

 しかし,線増工事の完成により,神保原〜新宿間で増発を実施,12分サイクルで,1時間あたり急行20本,準急10分,各停10本の合計40本,混雑率は164%に低下,特に急行系統の輸送力が1.5倍に増強されたことによる混雑の緩和は顕著だった。
 また,平行ダイヤが解消したことにより,急行は8分短縮,各停も4分短縮された。

図表10.朝ラッシュ時ダイヤパターン図

(2)昼間時間帯

 高速急行の新設による対中〜遠距離スピードアップを実施したほか,高坂で高速急行急行とを接続させることで,両方向へ優等列車を等間隔で運転することとした。
 また,従来,都営新宿線に直通する列車は方南町止の列車を除くと,平日の朝・夕のラッシュ時の一部の急行のみであったが,今回のダイヤ改正では急行の半数を新たに都営新宿線に直通運転することとし,平日・土日を問わず,ほぼ終日にわたり直通急行が運転されることになった。
 これらにより,高頻度の高速輸送ネットワークを充実させ,自家用車,競合各線への競争力の確保,沿線価値の増大による収益の向上を図ることとした。

 なお,種別体系の変更により,1時間あたりの運転本数を,急行9本各停9本から,高速急行6本急行6本各停6本(新宿〜神保原間は9本)に変更した。

図表11.昼間時ダイヤパターン(列車時刻表)

(3)夕ラッシュ時・深夜時間帯

 昼間時同様,種別体系の変更により運転形態を変更した。また,線路容量の増大により増発が可能となり,混雑の緩和を図った

 基本的には昼間時と同様に,10分サイクルに高速急行1本,急行1本,各停1本が運転されるが,特に利用者の多い18時台のみ7.5分サイクルに変更されている。

 また,高速急行の運転が終了する22時台以降は,従来どおり,急行と各停が1:1で運転されるが,混雑緩和のため,運転間隔が短くなり,増発による混雑緩和がされた。

 このほか,遠距離利用者の増大による,深夜時間帯の区間急行の急行への種別変更や運転区間延長が実施された。

 都営新宿線直通関連でも,従来の直通急行は本八幡19:23発が最終であったが,大幅に繰り下げられ,本八幡21:13発が最終となった。これにより,早朝・深夜を除き,ほぼ終日,都営新宿線直通の急行が運転されることとなった。

図表12.夕ラッシュ時〜深夜時間帯 運転本数

図表13.深夜時間帯 急行系統時刻表(新宿駅出発23:00〜)

図表14.夕ラッシュ時最ピーク時ダイヤパターン(列車時刻表)

 

 

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