[ Diagram ] 宮ヶ瀬線のダイヤ

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03.現在のダイヤ

03-2.宮ヶ瀬線

1.総論

(1)路線概要

 宮ヶ瀬線は,新宿から多摩丘陵を通過し,相模原台地を経て,丹沢山塊の東端の半原に至る全長48.3kmの本線と,高坂から架空都市「中原市」に至る15.0kmの柚木支線の合計63.3kmからなる路線であり,輸送人員は,1日平均139万人であり,中原本線より約1.5倍の利用がある。
 沿線は,多摩川以東は以前からの市街地であり,一部商業集積が見られるものの,基本的には住宅地である。一方の多摩丘陵地区,相模原地区は1970年代以降,新規に建設された新規住宅群である。末端の愛川地区も開発が進んでおり,全線が東京方面への通勤圏内となっている。

図表1.全線路線図

(2)旅客流動

 沿線の住宅地から都心方面への通勤通学輸送が輸送の多数を占めており,新宿に向けて利用者が増えていく典型的な郊外路線である。ただし,多摩センターや中原など集積が見られる駅や郊外の大学等に向かう逆方向への流れも見られる。
 
 宮ヶ瀬線は,非常に輸送量が多いことが特徴で,隣接する小田急線や東急田園都市線よりも多く,首都圏の私鉄路線の中では最も多い。

 また,多摩丘陵地区発着の旅客が多いことから平均乗車距離が長く,最混雑区間(永福町〜桜上水間)の断面輸送量が半減するのは新宿から28.7kmの高坂であり,隣接する小田急線と並び,長距離利用者の多い路線となっている。
 
 神保原では,利用者の入れ替わりが見られるが,断面輸送量はほぼ変動せず,降車した分だけ乗車が見られる。
 高坂では柚木支線が分岐するが,沿線開発の進捗により輸送量は増加しており,本線と柚木支線の輸送量の比率は52:48とほぼ同等となっている。

 多摩センター,中原などは集積が見られ,これらを目的地として流動もあり,見られる。
 
 朝ラッシュ時の乗車率は高く,複々線・3線区間では166%(石川→桜上水)となっているものの,複線区間では192%(東多摩→神保原)となっている。

図表26.宮ヶ瀬線旅客流動

(3)種別体系

 以前は急行と各停からなる2階層構造であったが,輸送量の増加,遠距離利用者の増加等により,2001年に上位優等列車として高速急行を新設し,高速急行急行各停の3階層構造に移行した。
 
 種別体系の基本的な考え方は遠近分離を基本としており,近距離には各停,中距離以上には優等列車を当てることとしている。

 
 なお,この他に急行で途中から各停になる区間急行(天上以西各停)と準急(神保原以西各停)が存在する。

(種別の役割)
 
 高速急行
 最も利用の多い,新宿〜神保原以西間の旅客の利便を図るため設定された。新宿〜神保原間を無停車とすることで遠近分離を図るとともに,中〜遠距離利用者に速達サービスを提供している。

 早朝〜朝ラッシュ時・深夜を除き,ほぼ終日運転され,ダイヤの主力を担っている。
 停車駅が少ないことから表定速度が約75kmと高い。
 
 急行
 高速急行を補助し,同種別が停車しない主要駅間の速達サービスを提供している。また,高速急行と接続し,高速輸送ネットワークの構築を行っている。
 方南町(新線と接続),永福町(京王井の頭線)に停車し,各線との接続を果たす他,比較的乗降客数の多い,天上,南柚木,今井谷戸に停車し,これら各駅に対する優等需要に応えている。
 半数が,都営新宿線に直通運転しており,都車による運用も多い。

 高速急行が運転されない早朝〜朝ラッシュ時,夜間時間帯はダイヤの主力を担う。
 
 ・各停
 近距離区間では優等列車が止まらない代わりに,毎時9本の高密度で運転されている。神保原以西では優等列車に合わせ毎時6本で運転し,主要駅で緩急接続が行われる。
 高坂以西では田名方面行を原則にしている。これはダイヤが乱れた時の回復力を確保する為であるが,一方で中原方面は必ず乗換が必要というデメリットもある。

図表27.種別別停車駅・所要時間表

(4)ダイヤ作成上の留意点

 ダイヤ作成をするにあたって留意すべき点は多々あるが,ここでは代表的な事項を述べる。

@)大輸送量への対応(遠近分離運転,高速輸送ネットワーク,列車間の乗車率の平準化)

 宮ヶ瀬線の特徴である,大輸送量,遠距離利用者比率の高さを,いかに効率的に扱うかが重要な課題である。運転本数を単に増やすだけではなく,そこに付加価値をつけることが重要であり,遠近分離運転,3階層構造の種別体系と合わせ検討する必要がある。
 すなわち,近距離輸送は各停に特化させることで優等列車は中〜遠距離輸送に特化させ,高速化を図るとともに,列車間利用の平準化を図る。また,上位優等列車(高速急行)が下位優等列車(急行)に途中で追いつくことを利用し,これらを相互に接続させ,上位優等列車の高速性の有効範囲を拡大させるとともに,上位優等列車の停車しない各駅への利便性も確保している。
 また,上位優等列車の設定により輸送力に余裕が生じた下位優等列車は半数が都営新宿線直通(都営線内急行列車)として運転することにより,ネットワークの拡大を図るとともに役割の変更を行った。
 このほか,ラッシュ時は朝夕問わず,列車間の混雑の平準化に留意する必要がある。

A)ダイヤパターンの単純化

 宮ヶ瀬線は基本的に郊外型路線であり,旅客流動自体は然程複雑ではないが,高坂で柚木支線との分岐があること,都営新宿線との直通運転などにより,運転系統は比較的複雑になりがちである。
 多様な運転系統の設定は多くの区間において利用者に直通運転の利便性提供等を供給することが可能であるが,他方で運用が複雑になり運転管理が難しくなること,ダイヤ混乱時の運転整理に時間を要する可能性が高くなる等の問題もある。
 当線の場合,本線の末端区間に単線区間があること,本線級の支線があること,他局線と直通運転を行っていること,2001年以降,基本的なダイヤ構成が単純な1:1のダイヤから1:1:1の多様な種別を組み合わせたダイヤに移行したことなどにより,通常時からダイヤが複雑になっており,これらからダイヤの基本的な利便性を低下させない範囲内において,運転障害時の回復力確保や運用の単純化のため,極力ダイヤパターンを単純化する必要がある。

B)都営新宿線との調整

 都営新宿線とは各サイクルに1本運転される直通急行を除くと,原則的に宮ヶ瀬線系統との直通運転は行われていないので,ダイヤパターンの調整が問題になることはあまりない。よって宮ヶ瀬線は,三田線との相互依存度の高い中原本線に比べ,自社線のダイヤ選定の自由度が高い。
 しかしながら,2001年のダイヤ改正より都営新宿線との直通運転を拡大し,ほぼ終日にわたり直通運転されることになったことから,運用面での制約が増加しているところである。

C)配線

 宮ヶ瀬線の大部分は複線であるが,本線末端部の水郷田名〜小沢信号所,愛川〜半原間(6.5km)は単線であることからダイヤ編成上のネックになるほか,運転障害時の運転整理に支障となることも留意する必要がある。
 このほか,ダイヤ編成上の支障となりやすい箇所として,高坂駅の折返し線が1線のみである点も留意が必要である。

D)中原本線との乗換

 神保原と中原で中原本線と交差しており,乗換のための待ち時間を極力少なくし,乗換の利便性を高める必要がある。但し,運転本数が多いラッシュ時間帯は待ち時間が短くなるため,ダイヤ作成上の優先順位は低くなる。

 

2.各時間帯別ダイヤ

(1)昼間時ダイヤ

 列車時刻表(12時台下り)  列車時刻表(12時台上り)

 速達性とフリークエンシーを向上させ,競争力を持つダイヤ編成としている。その為,高速急行・急行・各停を各所にて有機的に接続させている。1時間あたりの運転本数が21本と多いが,元来,輸送量が多いことから,フリークエンシーの向上が可能な状況を生み出している。

 また,中原本線,都営新宿線との接続にも配慮し,面的なネットワーク形成・速達性の向上も図っている。

 ダイヤは10分サイクルに高速急行1,急行1,各停1を基本とする。高速急行と急行は半原行と月峰十区行が交互に運転され,互いに高坂で接続する。また,急行の半数は都営新宿線と直通運転し,都営線内も含め急行運転する。各停は新宿発の列車は全列車田名方面に直通し,柚木支線方面は高坂〜中原間の区間運転で対応する。これは運転系統を単純化することでダイヤの弾力性を高め,運用の単純化及び運行障害時の運転整理を容易にするためである。

図表28.昼間時ダイヤパターン図

図表29.昼間時主要区間別輸送状況

(2)朝ラッシュ時ダイヤ

 列車時刻表(08時台上り)

 朝ラッシュ時は混雑の緩和・平準化を最大の課題としてダイヤ編成を行っている。現在,神保原〜新宿間で上り線の複々線化が完了していることから,同区間内の混雑はだいぶ緩和されており,速度面でも大きく向上している。
 しかし,神保原以西の複線区間では列車によっては未だに200%を超える混雑が発生している。その為,極力追い抜きを行わない「平行ダイヤ」を導入し,混雑の平準化を図っているが,デメリットとして列車の速度が大きく低下している。

 ダイヤ構成は12分サイクルに急行2本,準急1本,各停2本で,複々線区間では毎時40本,複線区間では毎時30本,高坂以西は各方面とも毎時15本で急行2:準急1である。
 急行と準急は10両編成,各停は8両編成である。
 都営線にはそれぞれ12分毎に急行と各停が直通運転している。急行は10両編成,各停は8両編成である。なお,急行は10両編成であることから,中原車の限定運用である。

 運転面の特徴としては,複々線・3線区間では,急行線に急行・準急,緩行線に各停が走行し,緩急分離をしている。但し,神保原駅と永福町駅は急行線の列車も緩行線のホームを使用し交互発着を行い,輸送障害の大きな要因である,主要駅付近のダンゴ運転の緩和を図っている。また,ダンゴ運転緩和対策として,神保原駅の急行線ではホームが両側に設置されており,これも大きな効果を発揮している。

 平均混雑率は複々線区間では一条→石川間で170%,複線区間では東多摩→神保原間で189%となっている。下図のとおり列車毎にある程度バラツキが生じているが,概ね許容範囲におさまっている。なお列車毎では月峰十区発新宿行の急行が天上→神保原間で212%の平均混雑率となっている。
 
 列車毎の利用状況の平準化のため,平行ダイヤを編成している。なお,速度面については,2001年に神保原→新宿間が3線化又は複々線化されたことから,昼間時と以前のようなダンゴ運転はなくなっている。今後,天上〜神保原間が3線化されれば,徐行区間は概ね解消される見込みである。

図表30.朝ラッシュ時ダイヤパターン図

(3)夕ラッシュ時ダイヤ

 列車時刻表 ピーク時(18時台下り)  列車時刻表 ピーク後(17・19〜21時台下り)  列車時刻表(22時台下り)

 昼間時同様,速達性とフリークエンシーの向上のため,高速急行・急行・各停の3種別を組み合わせたパターンダイヤを組んでいる。但し,昼間時に比べ,混雑の平準化が要素として加わっており,その為,高速急行・急行は昼間時に比べ増発傾向にあるのに対し,各停は減便傾向にある。また,優等列車が多いことの効果として,運転本数に比し,運用本数がすくなりなり,コスト削減の効果がある。

 基本構造は昼間時同様,1サイクルあたり高速急行1本,急行1本,各停1本である。
 この構造を基に輸送量に応じサイクルの長さを調整することで適切な輸送力を提供しており,18時台が7.5分サイクル,17時台・19〜21時台が10分サイクルである。

 サイクルの長さ以外は昼間時と同様であるが,都営線直通急行が都営線内各停となっている。また19時台以降は運用数調整及び輸送力調整のため各停が毎時6本となり昼間時より少なくなる。

 なお,17時台以降は都営新宿線直通を除き全列車10両編成での運転である。この為,15時台以降,田名,天上で各停運用車の車両交換(8両→10両)又は増結(8両→10両)が頻繁に行われる。

 22時台以降は急行と各停のみのダイヤとなり,徐々に運転本数が減っていく。

図表31.夕ラッシュ時種別毎平均混雑率 (永福町→桜上水)

(4)早朝ダイヤ

 列車時刻表(05時台下り)   列車時刻表(05時台上り)
 
 保守作業の時間の確保や労務環境の見地から始発の時刻は基本的に05:00としている。但し,一部は入出庫の都合から4時台から運転されている。

 なお,この中で特記すべき列車は,淵野辺04:35発の新宿行で,この列車は神保原で中原本線の急行西高島平行に接続し,さらにこの列車は品川で京急の羽田空港行に接続しており,羽田の始発便に接続が可能である。

 同時に新宿周りでも品川周りでも東京駅の始発新幹線に接続可能な列車でもある。淵野辺始発であることから,多摩地区はもとより相模原地区から羽田・東京の双方にアクセス可能となっている。

(5)深夜ダイヤ

 列車時刻表(23時台下り)   列車時刻表(23時台上り)

 早朝同様,保守作業の時間の確保や労務環境の見地から終着は01:00を基本としている。但し,入庫の都合から回送列車を含み01:30頃まで列車が運転されている。

 下り列車は時間と共に運転間隔が長くなる。

 なお,終電の混雑を緩和するため,0:26発準急月峰十区行が増発された。

(6)運用

 都営線直通運用と宮ヶ瀬線内限定運用に分かれており,直通運用は都車限定運用と中原車運用に分かれる。中原車運用は増結運用があることから完全に中原車に限定される。

 線内運用車は10連,8連,2連があるが,このうち,10連には10両固定編成のほか8+2編成や直通編成が投入されることもある。
 
 夜間留置については,基地内留置を基本としており,例外として方南町と中原に各2編成,淵野辺に1編成の留置がある。

 また,他社線内滞泊については,岩本町と大島に各1編成の留置がある。

図表32.全線路線図

 

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