■ 概 要
製造初年2001年。
8000系の製造開始から10年以上経過し,新技術の動向,昨今の経済・輸送動向などが大分変化してきた。昨今の経済事情からコストダウンの要請が非常に強くなっている一方でインテリジェンス化,サバイバリティの向上,サービスレベルの向上などが要請されていた。ちょうど5000系の置換が予定されていたこともあり,これらは既に基本設計が古くなってきた8000系の増備ではなく,新設計の新型車を当てるのが適当とされたため,新型車9000系を新製することとした。
新製にあたっては,新技術を採用する他,昨今の輸送人員の停滞という今まで経験したことのない状況に対応する為,製造コスト,保守コストなどのコストダウンを従来以上に求めることとした。しかし,単なるコストダウンではなく,サービスレベルの向上をも同時に満足させるべく,基本コンセプトを従来以上に吟味の上,製作された。
2008年8月1日現在,338両が在籍している。
■ 基本構成・主要機器類
基本的な構成は在来車通り,MT同数の8両又は10両編成である。
このうち,MT比について,M車の減少による製造コスト削減が検討されたが,雨天時における滑走に難があること,電気ブレーキの魅力を削ぐことになることから,従来どおり1:1とした。
主電動機出力は190KWに向上,中速域以上の加速性能を向上,最高速度は従来どおり120km/hながら,運転時分の短縮が可能になっており,将来の速度向上に備えている。
制動は電制優先の回生併用電磁直通制動であるが,従来5km程度で失効していた回生制動を停止時まで動作可能な電気停止制動を初めて採用した。これにより乗り心地・運転性の改善のほか,制輪子の磨耗が抑制されることによる保守の向上が実現した。
台車は8000系後期型同様のモノリンク式ボルスタレス台車が採用された。
■ TICS
従来,ブレーキなどの諸制御はユニット単位で行われていたが,これを列車単位で一元化し効率化するほか,併結時の自動放送装置の自動対応,検査の自動化など列車のもつ情報の統合化・自動化・他のシステムとのリンケージの容易化などを目的にTICS(列車情報制御装置)を搭載した。当面は列車単位での最適化として用いられるが,将来は機能を拡張し他のシステムとのリンケージを含む高度化を視野に入れている。
■ 車体・外装
車体は従来どおりアルミニウム合金であるが,従来のシングルスキン方式ではなく,ダブルスキン方式となった。これにより静音化・制振化・軽量化,工程数の削減などが可能になり,コストダウンと同時にサービスレベルの向上が可能になった。またFSW溶接により美しい鋼体となり,外観も向上している。
デザインは一新され,正面はブラックフェイスになり,上方に若干傾斜した緩やかな三面折妻とした。また前照灯にHID灯が採用され,位置も視認性向上の為に上部に移設された。側面は扉幅の拡大により側窓寸法が小さくなったことから従来の2枚窓から1枚窓となった。なお,換気面を考慮し,側窓は従来どおり開閉可能であるが,メンテナンスフリー化の為に窓に熱線吸収ガラスを採用しカーテンは廃止した。
種別・行先案内装置については側面・前面ともにLED式が全面的に採用された。
パンタグラフは部品点数の削減,着雪への対応を考慮し,シングルアーム式が採用された。
■ 接客設備
側扉の寸法が幅200mm,高さ50mm拡大され,幅1600mm,高さ1900mmと大型化された。また扉間上部にはLED式の案内装置が全扉上部に設置されている。
腰掛は座席幅は470mmに拡大されたが,側扉の大型化もあり車端部の座席が2人掛となった。形状は8000系後期型同様の片持ち式であり,大型仕切り版が引き続き採用されている。扉間の座席に2箇所ポールが設置されているのも8000系後期型同様である。
この他ではバリアフリー対応として車椅子スペースを各Tc車の運転室後方に設置した。
■ 運転設備
運転設備は基本的に在来車に準じているが,マスコン・ブレーキハンドルはモニター等の使用の便宜を考慮し左手ワンハンドル型に変更され,運転台左側に移設された。一方の右手側にはモニターや各種スイッチなどが集約して設置され,従来とは異なる機器配置となった。また右手側には右手の不使用時に使用する手すりを設置した。
■ 運用
中原本線,宮ヶ瀬線とも地下鉄直通を含む全運用に投入されている。他系列との併結も行われており,5000系以降の各系列に併結可能である。
なお,在来車に比べ乗降性が良いことから,混雑し乗降が多い列車に優先して投入されている。
■ マイナーチェンジ
2005年増備車より扉上部のLED装置が1面の液晶表示装置に変更された。なお,現在は1面のみであるが,さらに1面の増設が可能なよう準備済である。また,前面・側面の種別・行先案内装置もフルカラー化された。
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