[ Line ] 中原本線について

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1.概要

 中原本線は品川から多摩丘陵を通過し,架空都市「中原市」を経て,津久井渓谷の三ヶ木に至る全長52.7kmの路線である。

 沿線は住宅地が続いており,典型的な通勤通学路線である。品川〜成城間は戦前からの住宅地であり,閑静な住宅地といった雰囲気であるが,成城以西,特に多摩丘陵地区は1970年台以降の大規模な造成により中層団地群が連なる。

 これらの宅地開発により中原本線の輸送は急増した。1950〜60年代には狛江町,神保原町で人口増加が発生,同時に多摩丘陵を飛び越え,中原市,相模原市でも人口が急増した。これらにより急行の増発・増結が行われ,1960年には急行6両化,1965年には急行8両化が行われた。また,スピードアップも行われ,品川〜中原間を従来より5分早い37分で結んだ。

 1960年代後半になると多摩丘陵地区で重機を用いた大規模な宅地造成が行われ,下田団地,殺生団地などで相次いで入居が始まった。これらにより,1972年には急行の大型車10両運転が始まり,230%を超えていた混雑率は170%台にまで低下した。また,1972年に宮ヶ瀬線が神保原まで開業したことにより品川〜神保原間の輸送量が減少したことも,混雑の緩和に繋がった。

 しかし,多摩丘陵地区での宅地開発の進展により,神保原以西での輸送量が増加,1982年に急行の10両化が行われたものの,1991年には大沢→神保原間で混雑率が197%となった。だが,1992年の宮ヶ瀬線柚木支線の中原開業により混雑率も170%台にまで低下した。

 近年は少子高齢化の影響から1993年以降,輸送量の微減傾向にあり,歯止めがかからない状況である。沿線人口は微増傾向にあるものの,生産年齢人口は微減傾向にあり,これに加え,高度成長期に開発された地区の住民が相次いで退職を迎えることから,今後も輸送量の減少傾向は変わらないと予想している。

2.規格

総延長:52.7km(複線45.6km,単線7.1km)
駅数:30駅
電化方式: 直流1500V
軌間:1067mm
車両規格:車体長19500mm,車体幅2870mm
保安装置:中原式ATS

3.旅客流動

 基本的には郊外から都心側に向かう流動が主体ではあるが,品川〜神保原間では他線と交差することが多いことから,これら各線との接続駅に向かう流動や交差する各駅間を結ぶ流動が多い。品川〜神保原間で断面輸送量にあまり変化がないことからもうかがえる。
 

 一方,神保原以西では,以前は中原地区に対する流動が多く,都市間路線的な性格を持っていたが,宮ヶ瀬線柚木支線の開業により中原地区からの需要が分散したことや,途中の多摩丘陵地区の住宅開発による需要増から,現在は距離に比例して輸送量が減少していく,郊外路線的性格を持っている。

 都心寄りで両方向に対する流動があること,短距離利用者が全線に渡り多いこと,断面輸送量の傾斜が緩やかであることなどから,営業係数が良好なのが特徴である。

4.運転時分・種別体系

現在,通勤時に運転されている種別を除くと急行,各停の2種のみである。
 急行は他線との接続駅及び各地区の主要駅に停車する。以前は品川,学芸大学,成城,神保原,中原以遠の各駅のみの停車であったが,1977年に桜新町が追加,1987年に新町,1997年に下田が追加となり,現在に至った。表定速度も最速時70.6kmであったが,現在は63.1kmまで低下している。

5.配線図

 品川〜久保沢間が複線,久保沢〜三ヶ木間が単線である。ホーム有効長は,優等列車停車駅が210m(10両編成対応),それ以外が170m(8両編成対応)である。

 起点の品川は三田線開業時に大改造され,従来の頭端式3面4線から通過式2面4線になった。また,両側に折返し設備が設置され,下り寄りは8両対応,上り寄りは10両対応となっている。

 武蔵小山は1975年に待避設備が新設されたが,ラッシュ時間帯に片方向のみ通過待避を行い,通常時間帯は待避を行わないことを想定していたことから,各停の所要時間を増加させない為に上下本線にホームを設けつつ,上下双方が同一時間帯に待避を行わないことから待避線は1線のみとする配置とした。

 上用賀は以前は工場と検車区が置かれており,永く運転上の要所であった。しかし相次ぐ車両増備に設備が手狭になったことや,工場設備の合理化のため1977年に工場が宮ヶ瀬線の天上工場に統合された。また,1992年のダイヤ改正で中原本線の車両数が減少したことと,1987年に新設された南青山検車区や宮ヶ瀬線の天上検車区の検修機能強化により,検車区も1992年に廃止された。現在は駅に隣接して留置設備が設けられているのみである。

 西和泉は開設当初から2面4線分の用地が確保されていたが,実際に退避設備が設けられたのは1970年に上り線が設けられただけである。主として朝ラッシュ時に神保原での退避を代わりに当駅で行う為に用いられている。これらは神保原での停車時間が大きく,同駅での退避が非効率的であり,神保原では交互発着し,代わりに西和泉で退避を行う方が所要時間が短くなる為である。

 神保原は2面4線に上下双方に折返し設備が設けられている他,小規模な留置設備が駅に隣接して,及び駅からやや離れた北側に設けられている。また,JR南武線とも線路が繋がっており,甲種輸送時にこの連絡線が用いられることがある。
 宮ヶ瀬線とはホームの北側でT字型に接続しており,標準乗換時間は3分である。
 地上が中原本線と南武線,2Fがコンコース,3Fが宮ヶ瀬線であり,大規模な駅設備となっている。

 坂浜は1977年に高架化されたが,同時に宮ヶ瀬線の天上駅への連絡線が設置され,これに対応するため2面3線化された。なお,2006年に退避線を中線に移し,上下両線が退避できるようになった(従来は下り線のみ退避可)。

 中原は以前は東中原と呼ばれており,国鉄横浜線に隣接した立地に2面4線(開業時は1面2線)の配置のほか,駅北側に東中原検車区(1955〜87)が設けられていた。当時は地上駅であったが,宮ヶ瀬線柚木支線の中原開業時に高架化及び駅周囲の区画整理事業が行われた結果,検車設備の更新・再編から検車区は南青山に移転,同時に駅名も中原に変更された。
 JR横浜線との間には連絡線があり,新車の甲種輸送のほか,1977年以降は重検,全検時に天上工場に入場するために中原〜淵野辺間で回送される。

 南青山は1988年開設の新しい駅であるが,最大の特徴は駅西側に隣接する南青山検車区である。同検車区は中原本線唯一の検修設備であり,交番検車までを担当する。なお,同検車区に隣接する留置設備は敷地の都合上,さほど大きくはなく,車両留置は各地に分散する留置設備を用いている。

6.ダイヤ

 ダイヤを参照。

7.車両

 全車20m級の大型車であり,現在の車両はすべて都営三田線に直通運転が可能である(但し都営ATC装備車に限る)。中原本線内は優等列車が最大10両編成,各停が8両編成である。なお,都営線内は最大8両編成であるため,自社線内10両運転の列車は品川で2両の解結が行われる。

 現在は5000系,8000系,9000系の3系列のみが用いられており,7000系は保守上の都合から用いられていない。なお,東京都からは6300系が乗入れている。

8.検修設備

・工場設備

 1977年までは上用賀に工場が設置され,全検・重検が行われていたが,設備の老朽化・能力不足から宮ヶ瀬線の天上工場に統合された。そのため,坂浜〜天上間の連絡線が設置されており,これを用いて入出場のための回送が行われている。

・検車設備

 以前は上用賀と東中原(現在の中原)に検車区が置かれていたが,上用賀検車区は設備の老朽化・能力不足,及び中原本線の車両数の減少に伴い,1992年に廃止された。
 一方,東中原検車区も用地が手狭であったことから車両増備に対応しきれず1987年に廃止された。
 変わって1987年に中原〜川尻間に南青山検車区が新設,中原本線用車両の月検査・交番検査・臨時検査を実施している。
 また,宮ヶ瀬線との連絡線を用いて天上検車区で検車を行う車両もある。

・留置設備

 上用賀,神保原,新町,南青山,川尻の5箇所の留置設備があるが,いずれも規模はさほど大きくない。
 山間の地形を走っていることから手頃な平地が少なく,以前から留置設備は分散する傾向があった。特に1960年代以降の車両増備の時は,その都度,留置設備を設けた為,現在においても複数の小規模な設備に分散して留置している。
 なお,以前は宮ヶ瀬線の天上にも留置されていたが,中原本線の車両数の減少により1992年以来常時の留置はないが,現在でも工事,検車等の都合により天上で留置される車両もあるほか,中原本線と宮ヶ瀬線との共通運用車は天上や田名でも留置される。

以上

 

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