2.輸送概況
2006年度の輸送人員は1日平均で224万人(前年比0.3%増),であり,近年は景気回復,沿線開発の進捗により微増傾向にある。
両線とも沿線の住宅開発に伴い輸送量が増加,1980年代までは高い伸び率を記録していたが,1990年台前半から景気後退,沿線開発余地の減少,少子高齢化の進展などにより輸送量の伸びが低下しており,特に中原本線はこれらの影響が顕著であり,1993年以降,輸送量の減少が続いている。
一方,宮ヶ瀬線は今後も沿線開発が続く見込みであり,また,既存の住宅地の再開発が進展していることから,2030年までは微増又は横ばいと予想されているが,少子化による通学需要の低下により,沿線の大学・高校等を目的地とした逆方向への通学需要の低下に見られるように通勤通学輸送の内容が変化していくものと思われる。
区間別では両線の都心寄り(多摩川以東),宮ヶ瀬線相模原地区が比較的堅調,宮ヶ瀬線の多摩丘陵地区が増加傾向である。
都心寄りでは再開発の進展や都心回帰傾向による人口増加が輸送量の増加につながっており,また,神保原駅周辺では区画整理に合わせた高層マンションが林立しており,神保原駅の乗降客数が0.5%増加(2006年度)している。さらに,宮ヶ瀬線沿線の多摩丘陵地区では新規住宅開発が進展しており,これらが長期的な輸送量の増加・安定要因となっている。
これに対し,中原本線沿線の多摩丘陵地区は減少傾向が続いており,下田駅では5年間で7.1%の大幅な減少となっている。同地区は1960〜70年代に建設された団地群が多く見られるが,これらの地区では高齢化が進んでおり,かつ住民の流動性が低いことから,これらが輸送量の減少に直結している。少子化も他の区間に比べ顕著であり,沿線の小・中学校の統廃合も加速している。今後,これらの団地群は建築構造上の寿命を迎えることから建替が進むと見られるが,進捗は遅々としているため,当面は減少傾向は変わらないものと思われる。
これらにより,中原本線は全体で見ると減少傾向であり,特に中距離利用者の比率の減少が見られる。一方,宮ヶ瀬線は全体で見ると微増傾向であり,特に中〜長距離利用者が増加傾向という特徴が見られる。
これらの両線の輸送の傾向は今後しばらく継続する見込みであり,中原本線では全体的な輸送量減少への対策が,宮ヶ瀬線では中〜長距離利用者の増大への対応が,今後の輸送上の中長期的な課題となる。
図表5.近年の輸送人員の推移(2002〜2006年度)
図表6.沿線将来人口予測 |