[ Diagram ] 中原本線のダイヤ

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03.現在のダイヤ

 ここからは,現在のダイヤについて,路線別にその概要を記述する。

03-1.中原本線

1.総論

(1)路線概要

 中原本線は,品川から多摩丘陵,架空都市「中原市」を経て,津久井渓谷の三ヶ木に至る全長52.7kmの路線であり,輸送人員は,1日平均85万人である。
 沿線は,品川〜成城間は戦前からの住宅地であり,閑静な住宅地といった雰囲気である。一方,成城以西,特に多摩丘陵地区は1970年台以降の大規模な造成により中層団地群が連なっているほか,大学,高校等の教育施設が多数存在する。また,末端の津久井地区も開発が進んでおり,全線が東京方面への通勤圏内となっている。

図表1.全線路線図

(2)旅客流動

 基本的には郊外から都心側に向かう流動が主体ではあるが,品川〜神保原間では他線と交差することが多いことから,これら各線との接続駅に向かう輸送や交差する各駅間を結ぶ短距離の輸送が多い。他方,多摩丘陵地区に多く存在する大学等や集積のある中原地区への逆方面への輸送も多く,当線の旅客流動は方向,利用距離ともに非常に複雑である。
 なお,ラッシュ時の混雑率は比較的低く,最混雑区間の上用賀→桜新町で平均乗車率は161%である。

図表19.中原本線旅客流動

(3)種別体系

 基本的に急行と各停の2階層による構成となっており,これに途中駅から各停となる準急,区間急行が加わり,さらに朝ラッシュ時専用の通勤快速,通勤急行が加わる。

 種別を2階層制(急行と各停)としているのは,3階層とするほど輸送人員が多くないため,及び旅客流動が非常に複雑であり,複数の種別を設定し複雑なダイヤとするより,2階層の種別による単純なパターンダイヤとし,全ての旅客流動に対応できる汎用なダイヤとする方が当線の旅客流動に合致するためである。

 これらから,中原本線のダイヤは,朝ラッシュ時を除き,2階層の種別による汎用なパターンダイヤにて構築されている。

図表20.種別別停車駅・所要時間表

(4)ダイヤ作成上の留意点

 ダイヤ作成をするにあたって留意すべき点は多々あるが,ここでは代表的な事項を述べる。

@)ダイヤパターンの単純化

 中原本線の旅客流動は非常に複雑であるため,一部時間帯・区間を除き,基本的に急行と各停による緩急比1:1の単純なダイヤとしている。
 単純なダイヤであるということは利用者からすれば非常にわかりやすく,利用のし易さに直結する。また,ダイヤが乱れたときの,ダイヤの回復力向上にも寄与する。
 なお,緩急比が1:1となっているのは,ダイヤパターンの単純化を企図したためであるが,有効乗車チャンスを最大限に向上するためでもある(来た列車に乗るのが最も目的地に早く着く。途中で追い越されない。)。ただし,昼間時の品川〜神保原間は短距離利用者への利便性提供及び並行する他社線への対応として,緩急比2:3となっている。

A)競争力の確保

 最小限のコストで最大限の効果を発揮することは経営上の重要課題であり,ダイヤ作成上も最も留意すべき点の一つである。目的が不明瞭な列車の設定や不用意な回送列車の設定等は避けなければならない。
 そのうえで,他社線や他の交通機関(バス,自家用車)との競合に留意し,競合相手に劣らない利便性の確保が必要である。このためには運転間隔の短縮(フリークエンシー),最高速度向上・加減速度向上・保安装置改善・運転取扱改善等によるスピードアップ,適切な緩急接続による所要時間短縮などが有効であるが,他方で,コストが過大にならないよう留意しなければならない。

B)都営三田線との調整

 都営三田線発着の列車は数本を除き全列車中原本線に直通運転している。そのため,中原本線のダイヤ,特に運転間隔は三田線の運転間隔の影響を大きく受ける。これは反対も然りであり,理想的な運転間隔が両線の間で異なる場合は両社局調整のうえ決定される。ゆえに必ずしも当線内で理想的なダイヤが作成できるわけではない。
 また,運用面でも中原急行所属車両と都営所属車両とで原則として運用を分けており,さらに両社局間で走行距離調整が必要となる。
 この他,都営線に乗り入れるためには都営線の保安・通信装置が必要になることから,中原急行の車両の中でも直通運用車と線内限定運用車に分かれることになる。
 中原本線のダイヤ作成上,これらの運用調整を予め考慮する必要がある。

C)配線

 中原本線の大部分は複線であるが,末端部の久保沢〜三ヶ木間(7.1km)は単線であり,同区間の最小運転間隔が5分40秒(実質的には9分30秒)であることから,これが全線のダイヤに大きな影響を与える。
 また,複線区間でも上下共用の待避設備を持っている箇所があり,これらは上下線間で支障しないよう留意しなければならない。これらは,運転障害時の運転整理に支障となることも留意する必要がある。

D)宮ヶ瀬線との乗換

 神保原と中原で宮ヶ瀬線と交差しており,乗換のための待ち時間を極力少なくし,乗換の利便性を高める必要がある。但し,運転本数が多いラッシュ時間帯は待ち時間が短くなるため,ダイヤ作成上の優先順位は低くなる。

 

2.各時間帯別ダイヤ

(1)昼間時ダイヤ

 列車時刻表(12時台下り)  列車時刻表(12時台上り)

 昼間時は適切な輸送力とフリークエンシーの提供を主眼におきつつ,相互直通運転をしている都営三田線のダイヤとの整合性も図りながらダイヤ編成をしている。

 実際のダイヤは,1時間あたり15本の運転で,急行が6本/h,各停が9本/h,緩急比2:3の20分サイクルダイヤである。なお,神保原以西は,急行・各停ともに6本/hの10分サイクルになる。

 急行は西高島平発三ヶ木行と品川発三ヶ木行が交互に運転され,両者を合わせ10分間隔で運転される。全車8両編成であり,三田線直通運用は中原車と都車の双方による運転,中原線内限定運用は中原車による運転である。
 途中駅での緩急接続のほか,神保原では上下とも宮ヶ瀬線の高速急行との接続を考慮したダイヤとなっており,新宿方面への速達性にも留意している。

 各停は品川〜神保原間は9本/h,神保原以西は6本/hであり,品川発中原行,西高島平発中原行,西高島平発神保原行が運転される。線内運用は中原車の8両編成(線内運用の急行と共通運用),直通運用は中原車と都車の双方による運用で6〜8両編成での運転である。

 品川〜神保原間で運転本数が多いのは,短距離利用者が多いこともさることながら,並行する東急線や路線バスとの競合,及び都営三田線のダイヤ(6分40秒毎)との整合性を図るためである。
 また,10分毎の急行と運転間隔が異なることから緩急接続地点が一定ではなく,接続がわかりづらいが,同区間は短距離利用の比率が高く,急行との緩急接続の優先度は必ずしも高くないため,ダイヤ上,重大な問題点とはなっていない。
 なお,神保原以西は輸送量が減少すること,急行との緩急接続を絡めた輸送が多くなること,宮ヶ瀬線との運転間隔(10分毎)の整合性が優先されることから,急行同様に10分毎の運転となっている。

図表21.昼間時ダイヤパターン図

図表5.昼間時主要区間別輸送状況

 

(2)朝ラッシュ時ダイヤ

 列車時刻表(08時台上り)

 少ない編成数で最大限の効果を発揮し,かつ混雑の緩和・平準化を目指したダイヤ編成を行っている。その為,優等列車に選択停車を採用し,列車間の混雑の均等化と高密度高速運転を図っている。

 実際のダイヤは,7.5分サイクルに通勤急行,通勤快速,各停が1本ずつ運転され,1時間あたり24本運転される。優等列車は10両編成,各停は8両編成で運転される。
 最混雑区間は上用賀→桜新町間で,平均混雑率は161%である。輸送量の減少から混雑状況は年々緩和されてきているが,それでも優等列車は高い混雑率となっている。

 現行ダイヤは緩急比2:1であるが,通常の種別である急行を2本連続して運転すると先行する列車と続行の列車との間で混雑状況に差が生じてしまう。そこで2本の列車の停車駅を異なるものとすることで混雑の均等化を図ると共に,停車駅を減らすことで速度向上を図った。また,各停の追い越しを緩急接続ではなく通過追い越しとすることで,待避時間を短縮しダイヤ全体の速達化を図った。
 これらにより高密度な運転本数を維持しながら高速化と混雑の均等化を可能としている。

 なお,成城〜桜新町間,桜新町〜学芸大学間といった通常の急行1駅間の利用の場合,現行ダイヤでは各停を用いるしかなく,また,各停も優等停車駅ですぐに優等列車に乗換できず所要時間が増大するという問題があるが,前者については元々所要時間差は少ないこと,混雑の分散化の見地から短距離利用者を比較的空いている各停に誘導したいことから特に問題はなしとしている。また,後者についてはダイヤ全体の高速化が図られていることから所要時間の増大は限定的であり,こちらも問題なしとしている。

 この他,三田線直通は全体の2/3であり,品川止の列車は品川で三田線列車に接続している。なお,優等列車は10両編成で運転されるが,三田線内は8両編成の運転となることから,品川で後2両が切り離される。この2両は中原方の折返し線に入線し,複数編成を併合した後,車庫に回送される。

図表22.朝ラッシュ時ダイヤパターン図

(3)夕ラッシュ時ダイヤ

列車時刻表(18時台下り)  列車時刻表(20時台下り)  列車時刻表(21時台下り)  列車時刻表(22時台下り)

 適切な輸送力の提供,都営三田線のダイヤとの調整,列車間の混雑の平準化を主眼にダイヤ編成をしており,基本的に緩急比1:1で急行と各停が交互に運転される。
 輸送量に応じ,時間帯によって運転間隔が異なるが,基本的なダイヤ構成は同様である。また,輸送力の調整のため,一部の急行は新町から各駅に停車する区間急行として運転される。

 急行は全列車8両編成であり,18時台〜19時台までは三田線直通と品川始発が交互に運転される。品川始発の列車は品川で三田線直通の各停と接続がある。
 なお,20時台〜21時台は2/3が三田線直通,1/3が品川始発となり,22時台以降は大半が三田線直通となる。

図表23.夕ラッシュ時ダイヤパターン図(18時台)

図表24.夕ラッシュ時種別毎平均混雑率 (学芸大学→野沢)

(4)早朝ダイヤ

 列車時刻表(05時台下り)  列車時刻表(05時台上り)

 深夜の保線時間確保の見地から,始発列車は原則的に05:00であるが,出庫の関係で05:00以前に始発列車が動き始めることもある。ただし,近年は出庫列車も極力05:00以降に出発するように変更されている。

 中原本線における始発列車の設定において特徴的なのが,品川で京急線羽田空港行及び新幹線の始発列車に接続することを考慮していることである。

 以前から東京駅の始発新幹線への接続は配慮してきたが,1998年の京急空港線延伸以降,羽田空港の始発便への接続をも考慮したダイヤにしている。その為,05時台に急行を1本増発(現在の05:21品川着準急),各停も1本,区間延長した。
 

(5)深夜ダイヤ

 列車時刻表(23時台下り)  列車時刻表(23時台上り)

 バブル期に深夜ダイヤの増発が行われたことから,終電の到着時刻は概ね01:00となっている。以前に比べると深夜時間帯の利用数は減少しているが,現在でも一定の需要があることから当面は現状を維持する予定である。
 なお,早朝ダイヤと同様,京急線羽田空港からの最終列車に接続したダイヤとしている。

(6)運用

 基本的に中原車と都車で運用が分けれている。特に中原車の運用には朝ラッシュ時を中心に分割併合運用があることから,この運用は完全に中原車の限定運用である。

 この他,他社線滞泊として,T運用に1運用,A運用に2運用,南青山,志村での滞泊がある。昼間時の入庫は両社車両とも随時行われており,長時間の滞在も珍しくない。

図表25.中原本線運用数一覧

 

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